🔄 Strogatz 8.6節:結合振動子と準周期性
1. トーラス:新しい相空間
平面、円筒に続く第3の重要な相空間がトーラス(ドーナツ面)。2つの角度変数 (θ₁, θ₂) を持つ系の自然な舞台。
θ̇₁ = f₁(θ₁, θ₂)
θ̇₂ = f₂(θ₁, θ₂)
f₁, f₂ は両変数について 2π 周期
トーラスは正方形 [0, 2π] × [0, 2π] の対辺を貼り合わせたもの:
- 上辺と下辺を貼り合わせる → 円筒
- 円筒の両端を貼り合わせる → トーラス
2. 結合振動子のモデル
θ̇₁ = ω₁ + K₁ sin(θ₂ − θ₁)
θ̇₂ = ω₂ + K₂ sin(θ₁ − θ₂)
パラメータの意味
- θ₁, θ₂:2つの振動子の位相
- ω₁, ω₂:自然振動数(結合がないときの速さ)
- K₁, K₂:結合強度(互いに引っ張り合う力)
物理的イメージ
円環状のトラックをジョギングする2人の友人:
- ω₁, ω₂ = それぞれの自然なペース
- K₁, K₂ = 友人を待ったり急いだりする傾向
応用例:概日リズムと睡眠覚醒サイクルの相互作用(Strogatz 1986, 1987)
3. 結合なしの場合 (K₁ = K₂ = 0)
θ̇₁ = ω₁, θ̇₂ = ω₂
正方形上の軌道は傾き ω₂/ω₁ の直線。傾きが有理数か無理数かで挙動が質的に異なる:
| ω₂/ω₁ |
軌道のタイプ |
トーラス上での様子 |
| 有理数 p/q |
周期軌道 |
閉曲線(トーラス結び目) |
| 無理数 |
準周期軌道 |
閉じずに稠密に埋める |
トーラス結び目の例
p:q = 3:2 のとき、軌道は三葉結び目 (trefoil knot) を形成!
4. デモ:結合なしの流れ
プリセット:
5. 結合ありの場合:位相ロック
位相差 φ = θ₁ − θ₂ を考えると:
φ̇ = (ω₁ − ω₂) − (K₁ + K₂) sin φ
これは4.3節の非一様振動子そのもの!
固定点の条件
sin φ* = (ω₁ − ω₂) / (K₁ + K₂)
- |ω₁ − ω₂| < K₁ + K₂:固定点あり → 位相ロック
- |ω₁ − ω₂| > K₁ + K₂:固定点なし → 位相ドリフト(準周期)
- |ω₁ − ω₂| = K₁ + K₂:サドルノード分岐
位相ロック時の妥協振動数
ω* = (K₁ω₂ + K₂ω₁) / (K₁ + K₂)
2つの振動子は「妥協」して同じ振動数で進む。結合が強い方の振動数に引っ張られる。
6. デモ:結合振動子
準周期(位相ドリフト)
プリセット:
7. まとめ:トーラス上の3つの挙動
| 条件 |
挙動 |
特徴 |
| 結合なし、有理数比 |
周期軌道 |
トーラス結び目 |
| 結合なし、無理数比 |
準周期 |
稠密、閉じない |
| 結合あり、|Δω| < ΣK |
位相ロック |
固定点に収束 |
| 結合あり、|Δω| > ΣK |
位相ドリフト |
準周期的 |
次のステップ(カオスへ)
8.6節では2次元のトーラス上の流れ。これに外部周期駆動や強い非線形性を加えると、トーラスが崩壊してカオスが生まれる可能性がある。