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SIRE LINE

Darley Arabian — Equinox

1700年頃、シリアの砂漠から一頭の馬が英国へ渡った。
Darley Arabian——現代サラブレッドの95%がその血を引く始祖。
以来319年、父から子へと受け継がれた血の系譜は
大洋を渡り、日本競馬の頂点に君臨する世界最強馬に至る。
28頭の名馬が紡いだ、父系の物語。

c.1700 — 2019

SCROLL
18世紀
19世紀前半
19世紀後半
20世紀前半
20世紀後半
21世紀
Generation I

Darley Arabian

1700

シリア・アレッポの砂漠で生まれたアラブ馬。イギリス商人Thomas Darleyが300金ソヴリンで購入し、ヨークシャーへ送った。一度も競走に出ることなく種牡馬として供用され、Y染色体解析により現代サラブレッドの約95%がこの馬のY染色体を保有していることが確認されている。

Generation II

Bartlett's Childers

1716

運動すると鼻から大量出血する「Bleeding Childers」。一度も競走に出られなかったが、種牡馬として1742年チャンピオンサイアーに。無敗の名馬Flying Childersの全兄弟。

Generation III

Squirt

1732

蹄葉炎で歩行困難となり殺処分が決まった。しかし一人の厩務員が命乞いをして命を繋いだ。この決断がなければ、Eclipseも、現代のサラブレッドも存在しない。

Generation IV

Marske

1750

カンバーランド公の死後、わずか20ギニーで農夫に売却された。しかし息子Eclipseの栄光により種付け料は100ギニーに跳ね上がる。George Stubbsが描いた黒鹿毛馬。

Generation V

Eclipse

1764

「Eclipse first, the rest nowhere」——18戦全勝の偉業を成し遂げた近代サラブレッドの始祖。その圧倒的な走りは競馬の歴史を根底から変えた。

Generation VI

Pot-8-Os

1773

厩務員が飼い葉桶に「Pot」と8つの「O」を書いた綴り間違いがそのまま正式名になった18世紀の珍事。レース中に馬主が替わるという異例の取引でも知られ、売買成立直後のそのレースを勝って新馬主のもとへ渡った。

Generation VII

Waxy

1790

名牝Penelopeとの配合から全産駒「W」始まりの名を持つ一族が生まれ、全兄弟WhaleboneとWhiskerを含む4頭のダービー馬を輩出。Eclipse系とHerod系の血が融合した理想的な交配の結晶。

Generation VIII

Whalebone

1807

体高15ハンド半インチ、「トルコポニーのような外見」と揶揄された小柄な体躯。しかしたった510ギニーで転売されたこの馬から、Sir HerculesとCamelという二つの父系王朝が枝分かれした。

Generation IX

Sir Hercules

1826

「余剰」と見なされた繁殖牝馬Periが胎内にこの馬を宿したままアイリッシュ海を渡り、ミース州で産声を上げた。平地のBirdcatcherから障害のDiscountまで、アイルランド馬産に新時代を切り拓いた種牡馬。

Generation X

Birdcatcher

1833

被毛に浮かぶ原因不明の白い斑点は今なお「Birdcatcher spots」の名で呼ばれる。全15戦をカラ競馬場のみで走りながら、産駒は海を越えて英国クラシック7勝を挙げた地理的逆説の種牡馬。

Generation XI

The Baron

1842

「痩身で凶暴な男爵」の異名を持つ気性難の栃栗毛。Theobald牧場でわずか2シーズン供用されただけでStockwellとRataplanの全兄弟を残し、フランスへ売却された。

Generation XII

Stockwell

1849

「種牡馬の帝王(Emperor of Stallions)」——醜いと嘲られた仔馬が、12頭のクラシック馬と三冠馬Lord Lyonを世に送り出し、19世紀の英国競馬を支配した。

Generation XIII

Doncaster

1870

950ギニーで買われ、45対1でダービーを制し、14,000ポンドで転売され、最後はオーストリア皇妃エリーザベト(シシィ)の手に渡ってハンガリーで余生を過ごした。値段が語る19世紀の名ステイヤー。

Generation XIV

Bend Or

1877

金色の馬体に銀のたてがみ——サイアーラインで最も美しく、最も物議を醸した馬。2012年のDNA鑑定は、この馬が血統書上の「Bend Or」ではなかった可能性を示した。

Generation XV

Bona Vista

1889

マイルを超えると走れなかった2000ギニー馬。25ギニーの種付料で始まった種牡馬生活は、Cylleneの誕生で一変し、15,000ギニーでハンガリーに渡って5度のリーディングサイアーに君臨した。

Generation XVI

Cyllene

1895

小柄で貧弱だった仔馬が11戦9勝の名馬に成長し、30,000ギニーの高値で売却。4頭のダービー馬を送り出し、うち1頭は国王エドワード7世の愛馬、もう1頭は史上わずか6頭の牝馬ダービー馬だった。

Generation XVII

Polymelus

1902

ケンブリッジ大学動物学博物館のロビーに、今も1頭の馬の全身骨格が展示されている。「理想のサラブレッド」の標本として保存されたその馬は、英リーディングサイアー5度の記録を持ち、2012年のBend Or DNA鑑定にもその歯が使われた。

Generation XVIII

Phalaris

1913

第一次大戦下、ニューマーケットだけで全24戦を走った無名のスプリンター。5,000ギニーでも買い手がつかなかったこの馬が、たった一頭の牝馬Scapa Flowとの交配からPharos、Fairway、Fair Isleを生み、現代サラブレッドの父系の90%を支配する王朝を築いた。

Generation XIX

Pharos

1920

Phalaris×Scapa Flowの黄金配合から生まれた「もう一頭の兄弟」。ダービーでは戦術ミスに泣いたが、種牡馬としてNearcoを世に送り出すことで雪辱を果たした。

Generation XX

Nearco

1935

テシオの最高傑作にして14戦全勝のイタリアの英雄。ムッソリーニがヒトラーと同盟を結ぶなか世界レコード価格で英国へ売却され、3本の独立した父系を通じて世界を征服した。

Generation XXI

Royal Charger

1942

このサイアーラインで最も地味な競走成績の馬でありながら、Nearcoの血をアメリカへ届けた運び手。3つの国を渡り歩き、見えない遺伝力で歴史を動かした。

Generation XXII

Turn-to

1951

生産者の死によりアメリカへ渡った孤児馬。キーンランドでグッゲンハイム家に2万ドルで落札され、のちに140万ドルでシンジケートが組まれる種牡馬となった。

Generation XXIII

Hail to Reason

1958

最初の5戦を落とした馬が、濃霧のアケダクトで覚醒。わずか9ヶ月で全米2歳王者に駆け上がり、種子骨骨折で消えた。種牡馬としてRoberto、Haloを通じ父系を世界に広げた。

Generation XXIV

Halo

1969

馬場を変えた転換者。ダートでは凡庸な成績に終わったが、芝に替わって別馬のように覚醒した。母Cosmahを通じてNorthern Dancerの母系と交わる隠された血の結節点。

Generation XXV

Sunday Silence

1986

二度のセリで買い手がつかず、76歳の老調教師に拾われた雑草馬。日本に渡りサイアーランキング13年連続首位 — 競馬史上最大の逆転物語。

Generation XXVI

Black Tide

2001

Sunday SilenceとWind in Her Hairの間に生まれた長兄。全弟ディープインパクトの影に隠れ続けたが、キタサンブラックを通じて独自の父系を確立した。

Generation XXVII

Kitasan Black

2012

演歌歌手・北島三郎が50年以上の馬主生活の末に巡り合ったG1×7勝の名馬。武豊騎乗で天皇賞春秋、ジャパンカップ、有馬記念を制覇。種牡馬としてイクイノックスを輩出。

Generation XXVIII

Equinox

2019

一口馬主500口×8万円の出資馬が、Longines世界最強馬に。10戦8勝、G1×6勝、獲得賞金22億円超。ルメール騎手とともに日本競馬の頂点を極めた青鹿毛馬。

Related Horses

サイアーラインの直系ではないが、血統史上重要な馬

18世紀

Flying Childers

c.1714 – 1741

「空を飛ぶ馬」と呼ばれた18世紀最強の競走馬。全戦無敗を貫き、金の重さでも買えないと言われた。しかしサイアーラインは途絶え、走れなかった全兄弟Bartlett's Childersの系譜がEclipseへと繋がった。

→ Bartlett's Childersの全兄弟
21世紀

Deep Impact

2002 – 2019

セレクトセールで7,350万円、無敗の三冠馬にして種牡馬としてリーディングサイアー11年連続首位。全兄Black Tideの影で生まれた弟が、日本競馬史上最高の馬となった。

→ Black Tideの全弟